2016年の4月から11月にかけて、東日本地域の4都市(宮城県仙台市、長野県長野市、茅野市、東京都多摩市)が"宮沢賢治"をテーマとした市民創作プログラム、および「風の又三郎」の舞台作品の創作・上演に、世界で活躍する舞台演出家小池博史らとともに臨む。

2016年7月27日水曜日

仙台市市民文化事業団 小池博史ブリッジプロジェクト 創作プログラム『KENJI』 桐島レンジ(映像)かく語りき

仙台市市民文化事業団 小池博史ブリッジプロジェクト 創作プログラム『KENJI』 桐島レンジ(映像)かく語りき




仙台篇フォローアップその2です。
映像担当の桐島レンジさんから、プロジェクトの感想をうかがいました。↓


桐島レンジさん


印象的だったのは、2日目。
小池博史と参加者の信頼関係が築かれた日。
濃厚な一日だった。

それを見た、桐島レンジ:「少し、厳し過ぎませんか??」
昨年のワークショップと比べて、過酷過ぎる。
車座になり、大きなホールで公演する意味などを話しました。
彼の中だけにある風景、それを我々は共有し始めた瞬間でした。

宮沢賢治をどう思うか??
そんな対話も、去年のワークショップではなかった。

配役の時間。
  
ただ、似合いそうだからと言う理由ではなく
個々の人々の可能性に賭ける姿に脅威を感じました。

参加者は、小池博史を理解し信じる。
それだけではなく、小池博史も又、参加者を信じている。
できない事は、言わない。できると信じて挑戦する関係。
これは、強力な信頼関係でした。

スロームブメント。
ただ、ゆっくりと動く訳ではない…
意識や感覚、空間や対話などを具体的に身体と結びつける。
我々の“言葉に頼り切った生活”とは掛け離れた異次元空間。
体験しなければ、理解不能な世界があった。

「遅い、まだ、遅い!!」「早い、まだ、早い!!」
どのくらいの速度かは、説明されない。
深い信頼関係の中で、感じ取らなければならない。

研ぎ澄まされた、意識や感覚での対話、決して言葉ではない。

この濃厚な信頼関係を通りすがりの見学者は理解できない。
知り合いの見学者は「イライラする」と、感想を述べた。

イライラ??
むしろ俺には完全に共有された意識に癒しすら感じた。
小池博史が有名な立派な演出家だから、言う事を聞く訳じゃない。
意識を共有されたのだ…(涙)
小池博史が見ているKENJIの風景を垣間見てしまう。

これは、日常では決して出会う事の出来ない風景だった。
「市民」なんて、人はいないんだ、誰もが必死に日常と戦っている。
一番輝かない存在「市民」なんてものに押し込まれてしまう。
本当は、誰もが可能性を無限に秘めている。

誰もが輝く存在なのだ!!
「一般市民」なんて、人は居ない!!

誰だって、輝きたい、幸せになりたい!!
なのに、“その方法”は誰も教えてはくれやしない。
お金に追われて、生活に追われて消費されてゆく人々…

唯一、小池博史は知っている。
そして、それを小池博史は命懸けで伝えている!!
ブリッジプロジェクトは、人々の心に橋を架ける!!
それが、伝わってくるのだ!!

「早い、まだ早い!!」
「遅い、まだ遅い!!」

一日中、彼は叫び続けている!!
なんて、功率の悪い方法なんだ!?

次第に、日を追う事に風景は現実化していく!!
参加者の目の色が、変わり始めている!!
もはや、これは市民ではない。

芸術が人々になぜ必要なのか!?
それは、人々を生み出すのは芸術だからなのだ!!
人を人と、たらしめる行為!!

これが、本来の人間のあるべき姿なのだ!!

(中略)


脇役などいない!!
誰もが、主人公である!!
必死に成らなければ、演じる事は出来ない!!

本気を出す!!
本気を出す!!
本気を出す!!

それでも、できないと自分に悔しくて更衣室で泣く参加者!!

回りくどく、面倒で、気力も体力も消費する。
現代では、恰好悪いとされている。
現代では、封印された方法だ。

誰もが、今、輝きを放ち始める!!
小池博史にしか、見えていなかった風景は…
もう、現実に、我々に見えている…(涙)

これは、幻なんかじゃない!!
そして、時間がない!!

これが、時間だ。
お金の為でもなく、まして生活の為でもない。
誰もが、懸命に自分がすべき事を「使命」を全うする!!

決して、鍛え上げられた肉体ではない。
しかし、その身体は今、命を宿し感覚が研ぎ澄まされ
空間や運動や意識を取り戻しているのである!!

そして、全ての参加者が!!
この10日間の夢の様な時間を公演として伝える!!
真っ直ぐに、直接、目の前で伝えるんだ!!

どっどど・どどうど。声が合わない!!
汽車が、曲がってゆく…

そんな小さなな事は、関係ない!!
※誰もが、本気で伝えたい事がある!!
この貴重な、10日間の全て!!

俺を信じろ!!
450回、殺してやる!!
生きると言えば、生きる!!
どっどど、どどうど、どどうど、どどう!!

なんて、熱いステージだ!!
出演者が、乗りに乗っているのが分かる!!
見飽きたはずの演目が、こんなにも輝いて見える!!

友人や親類、彼らに伝える瞬間!!
そして、鳴り止まない拍手と歓声!!

涙と汗と小池博史!!
ずらり、並んだ誇らしげな出演者を俺は見た。

その後で、俺は33晩、永遠に眠り続けた。
語り尽くせない時間だった。






…・・レンジさん、熱いメッセージをありがとうございました。





仙台市市民文化事業団 小池博史ブリッジプロジェクト 創作プログラム『KENJI』 アンケートより



こんにちは。お久しぶりです。
「KENJI」@仙台、夜分にもかかわらず250人のお客様にご覧いただき、まことにありがとうございました。
アンケート回答175通のうち、少しですが感想を紹介させていただきます。



・心に強くうったえかける作品だったと思います。少年が、けものたちに心から言葉をうったえるシーンが、迫力があり強く心に残りました。


・衝撃的でした。今まで見てきたものとは全くちがっていて、文が入るところ、動きの変化、とても素敵でした。踊り子さんと亡くなったはずの女のひと、可愛かったです。他の方の演技もとても面白く素敵でした。言葉が見つからない…


・イーハトーブ、死者の国、風の又三郎等、色々な宮沢賢治の要素を盛り込んだ作品でした。岩手県出身として嬉しく思います。無声の時間帯、もう少し表現力があるといい。哲学的な部分が多くて難しかったです。


・映像や人の体の動きを最大限に自由に使った演出が見ていてとてもワクワクしました。途中で映画を見ているような気持になるところがあって、とても楽しかったです。スローでたくさんの時間を使っている部分に、一体どんな意味が込められているんだろうと不思議に思いました。


・あぁーもうすごく濃密な時間だった。スローモーションのところは本当目が離せなくて、離せなくて。そしてもどかしかった。無料なのが信じられない。みてよかったーー!!!


・「魂との交流」という賢治作品の共通点を此処まで表現できているのが素晴らしかったです。


・言葉やセリフが少ない分、観る側の見読力が問われているような感じで、考えさせられる物がありました。

・音と映像、煙など、時間の流れなど小道具も可愛らしかった。何を言いたいのか、見る人の感じ方でいいのかな?


・役者の動き、発音全てが完璧でした。ホリゾントの使い方もおもしろかった。音響のボリュームが一部大きすぎるところがあった。


・きのう石巻大川小学校の敷地内にあるけんじの銀河鉄道壁画(震災後、5年4カ月経過)を見てきました。それと二重写しになり大いに感動しました。


・文字に起こせない感動をいただきました。小道具やプロジェクター、スモーク、照明、音響、そして身体を最大限活用した充実したお芝居でした。各々の表情がとにかく豊かでとても11日間で創り上げたとは思えません。静と動のメリハリがキレイに決まっていて、とても勉強になりました。1回といわず23回と見返し、新たな発見ができそうな充実感ある作品でした。


・ちょっとムズカシかった。


・エンディングの組み合った姿が印象的でした。平台の上よりも舞台に広がった時の方が空間が満ちていた。歌を聞きたかった気もする。
・最初から最後まで夢中になってみました。この舞台について全く知らずに観に来ましたが、とても楽しい時間を過ごせました。そして、久しぶりに賢治を読んでみようと思いました。


・音響の迫力すごかったです。効果音、BGMのセンスがカッコよかったです。スモークが効果的で雰囲気良い感じでした。ラストの赤の照明にシビれました。


・・・・・
まだまだ紹介しきれないのが残念ですが、ご感想はすべて、演出家と出演者、スタッフにフィードバックいたします。ありがとうございました!






























2016年7月14日木曜日

仙台市市民文化事業団 小池博史ブリッジプロジェクト 創作プログラム『KENJI』

演出助手の野々下です。

4館連携のプロジェクトであるKENJI

地域が風で繋がり、文化を作っていきます。

長野市芸術館   http://kaze2016.blogspot.jp/search/label/長野市芸術館
  

が最終地点です。

茅野では、こどもたちを対象にした創作ワークショップと、
「風の又三郎」鑑賞(※茅野市内全小学4年生プレビュー公演)が実施されます。

ワークショップでは講師に浜井弘治氏(「風の又三郎」「銀河鉄道」舞台衣装)を迎え、
こどもたちが衣装創作を体験します。

4つの地域で起こった風が、
地域を超えて繋がっていく。

そしてそれは子供たちに引き継がれ、
未来への繋がっていくようです。

今回のプロジェクトは、
時間と空間の境界線をなくし、
どこまでも続いていく旅になるかもしれません。    



2016年7月13日水曜日

仙台市市民文化事業団 小池博史ブリッジプロジェクト 創作プログラム『KENJI』7月12日②


演出助手の野々下です。

7/2にワークショップが開始した今回のプロジェクトですが、
7/12の成果発表公演をもちまして無事終了いたしました。





長野、多摩と受け継がれてきたバトンを、
無事次の茅野に渡せたようです。

創作プログラムKenji
舞台公演は、仙台が集大成になります。
まさに作品やプロジェクトやそこに関わる人々が熟成されたことが、仙台公演の成功へのつながったのだと思います。

長野で作られた、作品の概要が、多摩でアレンジされ、
そのアレンジの方法が、仙台では一歩進んで実施されたような印象です。

再演するというのではなく、アップデートする。
そしてその度に、表面を取り替えるのではなく、
深化されていったKenji


そこにはやはり関わってくださった人間の可能性への飽くなき欲求があった気がします。
何をするにも条件があり、その中で、たくさんのマイナス要素が出てきます。
ただそれをどうプラスに転換できるかが、コミュニケーション能力であり、演劇人だけではなく人間の専売特許のような気がします。

そして、そのコミュニケーション能力というものは非常に人間性と関連していて、
仙台チームはその人間性の深みを最大限に引き出し、公演という成果に反映できたのではないかと思います。

10日間といっても、自主練も含めて、110時間以上参加した方から、お仕事を終えて夜遅くにいらっしゃる方まで、参加の仕方も様々。そして、それはどの集団でも同じなのだと思います。 

様々な人が、様々な目的で関わりながらも、公演という最終目標にたどり着くために、
知恵を絞り、補い合い、時には衝突し、議論していくこと。

ビジネスの世界で生きてきた公募参加者には、そこにビジネスが介入していないことも新鮮だったのではないでしょうか?
高校生の参加者たちにとっては教育プログラムのような側面もあったのかもしれません。

可能態として、
「いつか出来うる」人間たちとして、
互いにコミュニケーションしていたこの時間が、
私には希望として映りました。

今後これがどういう成果として実るのか?
可能態として、町に、人間に、アートに、演劇に関わることで、
検証し、未来に受け渡していければと思います。








・・・・・・
夜分にもかかわらず、たくさんのお客様にご来場いただきまして、まことにありがとうございました。
謝謝!

2016年7月12日火曜日

仙台市市民文化事業団 小池博史ブリッジプロジェクト 創作プログラム『KENJI』7月12日①


いよいよ本日20時開演!


外は夏の熱気でムンムン。中は毛皮姿。

皆さま、晩御飯のあとにでも、どうぞお気軽にお越しください。


一同、礼

仙台市市民文化事業団 小池博史ブリッジプロジェクト 創作プログラム『KENJI』7月11日


舞台スタッフの相原です。

今日は7/11月曜日、本番前日です。


遅れての参加でしたので、稽古途中からの内容になってしまいますが、ご了承ください。



本番前日である今日は、シアターホールにて通しを行いました。


初めて通しをしたため、スタッフは裏で終始大慌てでした。衣装の管理から着替えの手伝い。小道具の準備から装置の移動など、とにかく大変という言葉に尽きます。 



 しかし、役者さんに輝いてもらうにはその土台がしっかりしていないといけません。本番ではしっかりと役者さんをサポートし、より良い舞台にできるよう頑張りたいと思います。それでは皆さん、本番頑張りましょう!

事務局より

舞台裏と広報との両輪フル回転、サポートフタッフのみなさん、ありがとうございます!
みなさんの支えあっての「KENJI」@仙台です!

今日はホールでの映像のインパクトに圧倒されました。
桐島レンジさん、ありがとうございます。



たった一度の舞台、多くのお客様のご来場をお待ちしております。


仙台市市民文化事業団 小池博史ブリッジプロジェクト 創作プログラム『KENJI』7月10日


補助スタッフの大河原です。
梅雨の合間か、夏日和の仙台です。本日も10時から稽古開始です。


まずは円座になって、昨日の稽古の振り返りから。小池さんと演出アシスタント荒木さんと出演者で、動きの確認などを細かく行っていきます。


それから昨日の稽古の続きで、後半からラストまでを重点的に稽古していきます。
役柄の気持ちを踏み込んで考え、動きも役者さん自身で考えるなど、出演者は頭も身体の感覚も「KENJI」にフル動員です。


後半部分は、スローの動きや、映像や照明の演出など、やや抽象的とも言える舞台創作が、見る人を日常とはずれた時空間に連れ出していくようです。
音も音楽も映像もめちゃめちゃ凝られていてカッコいいです!映像制作担当の桐島さんも追い込み作業されています。


ほぼ最後までストーリーをたどって演ってみたところで、19時ころからは、最初からの通し稽古。通しで見ると、スピード感がありめくるめく変化する舞台、そのディテールに釘付けです(と言っても、補助スタッフも舞台上の小道具を操作したり、出演者の衣装替えをサポートしたり、やることいろいろです!)。
明日はシアターホールで仕込み+稽古となり、いよいよ火曜日はリハーサル、そして本番公演です!

ところで今日は、小池さんが出演者の名前をたくさん間違えておりました。
渚ちゃんのことを「キヨミ」!、むじさんのことを「やぶさん」!、そして、せりなちゃんはなんと「ケビン」!!!
ケビン?!海外の人?男性?!と、稽古場は爆笑の渦でした。
やっぱり小池さんの引き出しはすごすぎです!!

稽古場見学の方も、高校生7名含む15名ほどいらっしゃいました。市内の高校演劇部の学生さんは、「迫力があってすごかった」とおっしゃっていました。本番はもっとすごいですよ〜観に来てくださいね!!


【出演者紹介】

続いては、仙台市内の高校で演劇部に所属する「西塚葉月」ちゃん。ピュアピュアなJK(女子高生)という感じですが、演技が始まると大人顔負け、大胆でかっこいい!

Q.ふだんはどんな役をすることが多いですか?
A.明るい女子とか、元気な役が多いです。


Q.今回の見栄張りな貴婦人?のような役はどうですか?
A.私、顎を上げちゃうクセがあって、ふだんも女王様的な感じになっちゃうので(笑)、イメージ的にはやりやすいです。あと性格もはっきりしているのでやりやすいですね。


Q.連日の稽古はどうですか?
A.演劇部ではみんなで作っていくかんじだけど、今回は演出家の世界観を受け取りつつやるので全然違う。これが本物なんだ!と思ってやってます。とってもためになってます。

Q.小池さんについてどう思いますか?
A.オーラ、貫禄がありますね。すごい人だなと思います。厳しい指導も全然平気、鍛えられる感じです!

Q.本番はどんな気持ちで臨みますか?
A.頭で考えるだけじゃなくて、感じて、そのままの感情をパーンって出せたら、爆発させられたらと思います。






2016年7月11日月曜日

小池博史さんインタビュー 後半/創作プログラム『KENJI』@仙台


201679日(土)@日立システムズホール仙台(青年文化センター)練習室4


-子供のころから表現のようなものに触れてきたんですか?

小池:うーん。たぶん人とは違ってたんだと思うんですよね。親にあきれられて、お前みたいなのはもう好きなようにやるしかないんだっていうことを、延々と言われてきてるから。たぶん人とはものの見方が違ったんだと思うんですよね。ただそれはなんですかって言われても分かんない。

ただ、高校生のときには建築家になろうと思ってて。でも大学受験で東京に出たときに、ある映画を見ちゃって、で、「ああ俺、映画監督なろう」ってその場で思い込んじゃってね。だからそういう、最初からいわゆる演劇とか踊りって全然興味なかったんです。それどころか演劇とか全然大っ嫌いで。よくこんなのやるやついるよなって思っていたというのが正直なところ。でも格闘技とかいろいろやってたので、そういう、動きといわゆる空間性と、そういった時間芸術的なことが全部一緒になっていったというのがそもそもなんですよね。それでなおかつ、自分が見たことがないものが見たいっていうのがずっと続いている。それで何十年もやってきていますけど、飽きないですよ、全然。やれることは限りなくあるなと思ってる。 

今回のKENJIも一緒ですよね。僕にとっては、出演者がどうだからって言いたくないわけ。出演者がどうであったとしても、みんなそれなりに魅力って持ってるんですね。自分ではコンプレックスだと思ってるところがあるかもしれないけど、それが魅力だったりもする。自分で、私はすてきだなって思いますか?

-いやもう、ダメです。

小池:だから、そう思った途端に何も出てこないんだよね。自分で自分を発見してあげる。私はかっこいいよねって思い込んでいくことがすごく重要。僕は本当にそう思うんです。日本にいると同調圧力がすごくて、人と同じじゃなきゃいけないみたいなのが強いんで大変だと思うけど、でも人と違ってておもしろいんであってね。ダメだって思わないことがたぶん一番肝心で、そうすると自信が生まれてくるから。だから成功するって大切なことなんだよね。小さいことでもいいの。一応ちゃんとここまでやれたとか、そういう記憶がやっぱり人を作っちゃう。みんなそれなりに輝きがあるんでね。だからそこの部分なんでね。もちろんそうじゃない部分だっていっぱいある。あるんだけども、そこの部分がいいよって思い込めば、そこを起点にできるじゃん。
 

でも結局、スロー(舞台後半で出てくるスロームーブメントのシーン)なんかもそうなんだけど、記憶と語るっていうことをよく言ってるけど、記憶と語っていくっていうのは、なんでそういうことを思い込んできたのかとかっていうことも含めて語っていけると、いろんな発見がある。そういうもんです(笑)。だから、人間っていうのは、自分を作っていくのは自分だから。

-小池さんにとってのKENJIはどんなものですか?

小池:稽古最初にも言いましたが、今の現代人がもっともまずいのはなにかというと、いわゆる人間の視点しか持たなくなったと。人間を中心にしてしか考えられなくなってくる。とすれば結局いろんな問題が起きても、その見方は非常に画一的になってくると。画一的になればなるほど、実は自分らで自分らの首を絞めて生きにくい世界にしてしまってる。

例えば僕が昔やってたパパ・タラフマラというグループは、タラフマラってメキシコの部族名なんですよ。で、そのタラフマラっていう部族も同じで、結局視点の取り方が、どうも今現在というのはもちろんあるにしても、今現在だけではなく古代と現在と未来を等価に見ていくみたいな、そういう視点っていうのはすごく重要だし。当然のようにメキシコだのアメリカン・ネイティブだの、基本的なネイティブの思考っていうのは、自然の中にあくまでも人間が含まれていて。その中でどういうふうな生をつくっていくかっていうことが問われてきたんだけど、そうじゃなくなってきたことによって、今もう世界はぼろぼろになってるでしょ。果たして生きられるのかというところまで来ちゃった。非常に危険ですよ。
 世界的に見れば宮沢賢治に限んないですけど、でも日本の中ではやっぱり賢治っていうのは、そういう意味ではとても視点が分かりやすい人でしょうね。
動物の視点だったり自然の視点だったり、あの世、死者の視点だったり、そういうものを等価に持っていくっていう意味で言ってるんですけどね。

以上、サポートスタッフ芦名と大河原が伺いました!

★番外編★
-約2週間、仙台に滞在されてのワークショップですが、仙台の印象はどうですか?

小池:仙台いいですよね。なんかこう、しっとりとしていて、どっか文化的なにおいもあるし。歴史もあるし。都市の規模だと福岡あたりと同じだけど、全然雰囲気違うもんね。

-舞台の仕事以外のときって何されてるんですか?

小池:嫌になっちゃうぐらいやることはあるんです。ほとんどオフがない。オフがあればいいんだけど。ないんだよなー。マッサージ行きたいなーとか、そういうのはありますね。

差し入れのパンでエネルギー補給!

※このインタビュー後、出演者のお1人が小池さんにマッサージをされていました!良かったです!!






小池博史さんインタビュー 前半/創作プログラム『KENJI』@仙台



201679日(土)@日立システムズホール仙台(青年文化センター)練習室4

-「KENJI」仙台版ということで、仙台の出演者とKENJIを創ってみてどうでしょうか?

小池:どこも全然条件が違うので、そもそも同じにならないんですよね。年齢の問題もあるし難しい面も多々あります。最初の長野の場合だと出演者の募集条件が35歳までだったんですよ。だから全員それより若くて、男女比が半々で全部で12人。それが多摩だと19人のうち17人が女性で男性が2人。そういう中で、やったことない人もプロも渾然一体としてる状態だったんですね。 

仙台はほぼ3分の2が40代以上と、年齢層が高い。だからいろんな意味で全然やり方は違うんですね。同時に、予算やらいろんな条件が違ってくると、やりにくいところもあれば、工夫が必要になってくるところもある。多摩なんて6日目には公演ですからね。平日はそんなに長いこと稽古できないし、稽古のあとのダメ出しは、劇場を出て外でやるというようなことをしていた。一方、長野の場合は条件がよかった。同じ作品だと言ってもなかなか違うんですね。

-出演者の個性も違いますよね。

小池:そうですね。それはもうまるっきり違う。それがおもしろいって言えばおもしろいですけどね。年齢層が高いと、いい意味では深みが出てきてすごくいい。若いとなかなかそんなわけにいかないんで。でも全体に、マイナスだと思っちゃうと何もできなくなるので、どうおもしろさに変えていくかですね。

-出演者の個性をおもしろく引き出すということ?

小池:それはこういうのだととても重要だと思うんですね。やっぱり1人1人がおもしろいと思わないとしょうがない。いつも思うんですが、素人だとしても、素人にはプロには絶対いないタイプっているわけですよ。例えば姫さん(出演者の1人、姫野さん)なんて、プロには絶対いないタイプ。その絶対いない感じをどうおもしろく見れるか。やっぱりいろんな意味での違った素材なんですよね、僕にとっては。

-市民と一緒に創作舞台をつくるというのは、レベルもバラバラだし一見面倒くさいと思うのですが、やり続ける理由はどんなものですか?

小池:プロにはないおもしろさってあるんですよね。何をやっているか、やってる側に問われるわけですよね。いかに演出力があるかっていうことが問われてくる。クオリティーで言えば、プロでやれば確かに高いんだけども、高くないおもしろさっていうのもあるでしょ? どんな素材をどんなふうに調理していくか。料理と一緒で、はいこういう材料があります、この材料で何ができますか、って僕が言われてるようなもので。材料がよくないんでダメですって言ってしまうわけにはいかないでしょう?

-小池さん自身もすごく楽しまれてるということ?

小池:きついですけど。きついというのは、時間がやっぱりどうしても
短いんで。通常だとひと月ふた月ってかけますけど、そこまでかけられないでしょ。かけられない中でクオリティー的にある程度のところまで持っていかなきゃならない。今回みたいにちゃんと照明も付いてきちんとした公演になるとなると、そりゃあきついことはきついですよね。

-特に1人1人の電車のエピソードのところとか、同じシーンでも毎日いろんな演出が加わりますが、あの表現のバリエーションは、どこから湧いてくるんですか?

小池:それは分かんないんだよな。自分のことで言えばもう分かんないとしか言いようがなくて。なんでですかって言われても、出てくるんだよねとしか言いようがない。



-それは昔からなんですか?

小池:結構昔からですね。あんまりだから、作品を作るとかでほとんど悩んだことがない。



(後半に続きます)


2016年7月10日日曜日

仙台市市民文化事業団 小池博史ブリッジプロジェクト 創作プログラム『KENJI』7月9日


こんにちは。舞台スタッフの斎藤です。
7日目の稽古、前回よりも皆さん疲れが出ているようですが、今日もしっかりみっちり練習です。

合計10時間弱。(10:00~21:30)

本物の厳しさを味わいました…


午前は熊のシーンを重点的に練習。
止まらない演出。増えていく注文。増えていく小さな休憩。
役者さんのなかには「500mlじゃ足りない」と、1リットルのペットボトルで飲み物を持ってきている人もいました。


ダンスの振り、ピストルを投げる位置、どこで走り込むかのタイミング……
確認するものの量はどんどん増していきますが、皆さん、弱音を吐くことなく頑張っています。どれだけダメ出しを受けても心を折らずに一生懸命どう表現するかを探り、研究する姿は格好いいものでした…‼

午後は午前のシーンの続きをメインに練習。



朝よりも増える注文。無理難題をつけられる役者。演技と技術のコラボレーション。
(
無理難題も頑張って表現しようとしています!)
練習の合間に挟まれる休憩でも役者さん達は休むことなく振りや台詞、立ち位置の確認をしていました。

午後は幻想的な場面が多く、見ている側が考えさせられるところが多くあります。
どのような場面なのかは是非劇場で




【出演者紹介】

伊藤せりなさん

現役女子大学生のせりなさん。演出の小池さんによってコミカルなキャラクターを演じます!そのために小池さんから人一倍たくさんの注文を受けますが


Q.
何故『KENJI』に参加しようと思ったのですか?
A.
素直にやってみたいと思ったからです!
 元々東京でやっていたのですが、やっぱり地元でやって、知り合いに見てもらいんですよ。
 まだ呼べてないんだけど()

Q.
今回の劇に対してどう思っていますか?
A.
私自身の問題ですが、「できない」から難しく思えてしまいますね
 その壁を越えられたらもっと楽しくできるんじゃないかなー違う世界が見えるのかなぁ

Q.
自分が演じる役(動物)についてどう思っていますか?
A.
素直。本能のゆくままに。

Q.
KENJI』の練習時間、普段なら何をしていますか?
A.
バイトをしています。
 東京に行くための交通費だったり、生活費だったりそのためにひたすらやっています。

Q.
参加して驚いたことはありますか?
A.
自分がこんなに声を出せるとは思っていなかったことですね。
 元々声が大きい方だと思っていたのですが、「もっと出せる」と言われてたぶん家族が公演を見に来たら、私じゃないってびっくりされると思います。

Q.
小池さんについてどう思いますか?
A.
愛のムチみたいな。
 当たりは強いけれど、でもそれって私のために言ってくれてるから、言われたときはイラッとしても、後から考えると自分じゃ出来ないことの道を作ってくれてるんだと思います。




佐藤一恵さん

稽古では誰よりも本気で、他の役者さんにもよく的確なアドバイスをしている佐藤さん。ただ、演出からは「動きがかわいい」「可愛すぎるんだよ」と注意されてしまいます

Q.
なぜ『KENJI』に参加しようと思ったのですか?
A.
小池さんの演出だからです。

Q.
今回の劇に対してどう思っていますか?
A.
人間が生きるためのギリギリを越えてやり過ぎているすごくバランスが悪いというのを改めて感じます。
 『KENJI』の台詞に「俺達だって殺さなければ生きていけないんだ」というものがあるんですが、でも乱獲しすぎだよね。人間だけが生き物じゃないし。

Q.
自分が演じる役(車掌)についてどう思っていますか?
A.
とにかく、「皆さんの旅を先導していく」意識が強いので、
 如何なる事が起きようとも、皆さんを終点まで安全にお届けしなければならない、という風に思っています。

Q.
KENJI』の練習時間、普段なら何をしていますか?
A.
家事です。

Q.
参加して驚いたことはありますか?
A.
皆の士気が高いということですね。
 生業じゃないのに、脱落していく人が一人もいない。
 そこが一番スゴいと思っています。

Q.
小池さんについてどう思いますか?
A.
生まれてはじめて会う神様みたいな。
 私が小池さんに出会わなかったら、いい意味でいろいろ選択しなかった事がたくさんあるので。




演出家への反乱? 


衣装合わせ